市政の動き−議会報告
【23.03.19】福祉相談・生活支援 必要な人に届く支援体制を
相談したのに生活保護申請までたどり着けなかった
昨年12月末に「日系ブラジル人の生活保護拒否」と報道され、安城市役所社会福祉課の相談窓口での対応が問題とされました。
森下さちこ議員は、「申請させなかったことが問題」だとし、体制を整えるよう求めました。
通常、生活保護の申請のために安城市役所の窓口を訪れると、はじめに福祉相談係が対応をします。その後、生活保護申請が必要だと判断されると、生活支援係、生活保護担当のケースワーカーと話をして、申請へと進みます。
今回の事案では、相談者が初めて相談に訪れた日に「申請を拒否」され「差別的な発言」をされたと訴えています。
「どの時点で問題が発生したのか」との森下議員の質問に対し「当日は福祉相談係で対応したが、問題となるような対応はしていない」との強弁がありました。
生活保護の申請に訪れた相談者が申請できなかった理由について「本人から状況を確認した結果、入国管理局と領事館への相談を優先すべきと判断し、そちらへの相談を勧めた」と説明しました
生活に困窮する外国人に必要と認める保護を行うこと
「すでに困窮している相談者の状況を考えれば、まずは生活保護申請を受理し、その後、本人が入国管理局や領事館に相談にいく、もしくは、必要であれば福祉事務所が調査を実施するという対応ができたのではないか」との質問に対し、「居住や在留カードという、本邦へ在留するうえで重要となる事項に関して疑義があったため、まずはご本人自ら入国管理局へ相談していただく必要があると判断した」と、論議は平行線に。
市はHPで厚生省社会局長通知「生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について」(昭和29年5月8日付、社発第382号、平成30年6月8日付、社援発0608第8号)を基に対応した旨が掲載されています。
その通知には「保護を必要とする者が急迫な状況にあって放置することができない場合でない限り、申請却下の措置をとるべき」と記載されています。
相談者が初めて相談に訪れた時には数千円、その次に訪れたときには数百円の所持金で、子どもふたりを育てており、放置することができない状況で、申請却下の対象ではありませんでした。
申請が受理される数日前に、市が直接関係機関への問い合わせをしています。このことも考慮すれば、申請拒否が行われたことが明らかです
コロナ禍で外国人の相談件数が増加
安城市には、1月31日現在、18万939人の住民のうち7701人が外国人住民です。15歳から64歳の生産年齢人口は、6298人で約82%を占めています。
勤労世代である外国人住民は、不安定な雇用条件で働く傾向にあり、20年に始まったコロナのパンデミックで、経済的にも大きな影響を受けてきました。
20年度の福祉相談の状況は、外国人の割合が50%です。市全体の人口の4%を占める外国人の相談割合が高くなっています。
22年度の相談件数は549件で、そのうち外国人の占める割合は約21%(115件)と、人口に対する割合が高い状態が続いています。
外国人に対応する体制は整っていると答弁
福祉制度は複雑で日本人であっても理解しにくい点も有ります。
違う文化で育ち、言葉が不自由な外国人の場合は尚更、理解が困難です。専門用語が飛び交う場所で、同行した友人・知人でも通訳しきれない場合があります。
森下議員は、ひとりで来庁しても対応できるよう、「相談窓口に専門の知識を有する通訳を配置する体制が必要ではないか」と質しました。
市は「通訳を必要とする外国人が相談に来られた場合は、通訳のできる職員を手配している。対応できない場合はテレビ電話通訳などを利用している」とし、現在、市民課に中国語、ポルトガル語、フィリピン語の通訳を専門とする職員を、それぞれ1人ずつ、また国保年金課にポルトガル語の通訳ができる職員を1人配置していると説明。さらに、タブレット端末7台を使ったテレビ電話通訳や、電話を使った3者間電話通訳を活用しており、「通訳を必要とする外国人に対応する体制は整っている」との考えを示しました。
充分な意思疎通ができず問題は起きている
新聞報道の事案では、相談者が知人と相談に訪れた際、市側の通訳の同席がなく、HP上で「十分な意思疎通ができず、本市の意図が正しく伝わらなかったことについて反省する」としています。
「福祉相談においてどういう場面で通訳を必要と考えるのか」との質問に「相談者が日本語での会話ができず、また日本語を理解できる同行者がいない場合」としましたが、「福祉における相談や生活保護の実施においては専門的な話をする場合もあり、通訳の専門でない方では正しく伝わらないことも考えられる。できる限り市の用意する通訳で対応する」と答弁しました。